本当にボーダーコリーが欲しいのか?

アメリカのボーダーコリーレスキューからのメッセージです(FBCCが許可を得て、翻訳、掲載しています。)

(訳者注:この記事における「レスキュー団体」はアメリカのものです。)

◆ Do I REALLY want a BORDER COLLIE?

これからボーダーコリーを飼おうとされている方は,ここに書いてある内容をぜひ検討してみて下さい. この注意を読んだり他の資料で犬種に関する勉強をして,それでもこの犬をコントロールして「ボーダーコリー」ライフを エンジョイできると思われる方には,まずレスキューに預けられた犬から検討されることをお勧めします. ここでは,ボーダーコリーを購入する際に考慮すべき非常に重要なポイントを,Q&A方式で紹介します. すばらしいと言われる犬も,決してすべての人に対してではないことをお忘れなく.(Nick Carter /Border Collie Rescue, America)

◆ ボーダーコリーとは?

ボーダコリーは,羊を追うためにブリードされた,物事に熱中しやすい(あるいは執着しやすい)性格のはっきりした犬です.いろいろな色やサイズがありますが,一般的には体重30~60ポンドで,ブラック地に首周りや胸,頭部のストライプ,脚,尾の先に現われるホワイトが典型的な模様です.ただし実際には,レッド/ホワイト,ブラック/レッド/ホワイト(トライカラー),ブルーマール,レッドマール,ホワイト,タン/ブラック,セーブルのぶち,ブラックなど,いろいろな模様があります.その姿はTVコマーシャルやハリウッド映画で頻繁に目にすることができます(例えば映画「ベイブ」に登場した犬はボーダーコリーでした).家畜を追う(ハーディングする)ための驚くべき本能と,するどい知性で知られています.

◆ 「ハーディング本能」とは正確にはどういうことを指すんですか?

ボーダーコリーのハーディング本能とは,約200年以上をかけてブリードされてきた,行動上の特性のことです.ベテランのオーナーも含めて多くの人が,ハーディング本能はオオカミの殺傷本能が変化したものだろう,という誤った解釈をしています.事実は逆で,選択的なブリーディングによって,この種の本能はむしろ弱められてきました.この本能を「取り入れる」より,逆に「排除する」方向でブリーディングされてきたのです.すなわちボーダーコリーは,オオカミの群に見られる獲物をまとめて追いこむ本能を強く引き継いでいるのであって,獲物に襲いかかってとどめを刺す習性からは遠ざけられています.
ただし,いわゆる「ごろつきの犬」はこの限りではありません.ヨーロッパ諸国やオーストラリア,ニュージーランドなど,場合によっては犬がうろつき回ることが許されている国では,羊や子牛を殺傷するようなボーダコリーが家畜の脅威になることがあります.一度でも血の味を覚えたボーダコリーは二度と信用されず,その命は即座に絶たれます.ボーダーコリーのハーディング本能は,他の多くのハーディング・ドッグのそれとは異なっています.ほとんどの犬種には家畜をハンドラーから遠ざける習性があるのに対し,ボーダーコリーには遠くから家畜を囲い込み,ハンドラーの元に連れてくる性質(gatheringやfetchingと呼ばれます)があります.さらに,ボーダーコリーは(最初から)力ずくで家畜を追おうとはしません.まず眼の力,すなわち睨みつけることによって家畜を脅し,望む方向に誘導しようとする傾向があります.この非肉体的な手段が効かないときに限り,徐々に接触をエスカレートさせ,力を使うようになっていきます.吠えたり,歯を当てたり,時には噛みついたりして,頑固な羊を従わせるわけです.

◆ ボーダーコリーを飼いたいと思う最も一般的な動機は?

次の2つは,ボーダーコリーを購入する動機としてもっとも頻繁に耳にするものです.

  1. 私は訓練のやさしい賢い犬が飼いたいんです.ボーダーコリーは賢い犬だと聞きました.
  2. 子供にも最適だし,なんといってもすばらしい家庭ペットになるそうですね.

ほとんどのボーダーコリーやその飼い主に照らし合わせてみれば,これらの評判は誤りと言って良いと思います(状況を限定すれば当たっている部分もあるかもしれませんが).
どうしてこれほど多くのボーダーコリーがレスキューに持ち込まれるのでしょうか?これには一般的に次の3つの理由があり,そのどれもが彼らのハーディング本能に関係しています.

  • レスキューに持ち込まれる約1/4(この割合は地域によってばらつきがありますが)は,ハーディング本能が十分ではなく,農場において有能なハーディングドッグになれなかったボーダーコリー達です.犬の生まれ持った能力(あるいは能力の欠如)に逆らってまで働かせるよりは,家庭のペットなどもっと適した場所で暮らせるよう,農家からレスキューに預けられるのです.
  • これより高い率でレスキューに持ち込まれるのは,人,特に子供に噛みついたということで飼育を断念された犬たちです.ハーディング本能は(それが強い場合は特に)子供のいる家庭にはまったくそぐわないものです.子供や飼い主がハーディング本能の取り扱い方を学んだり,トレーニングしていない場合は特にそうです.ハーディング本能がそれほど強くなく,かつ飼い主の家族がその行動に対処する準備ができている場合に限り,ボーダーコリーは良き家庭犬となることができるのです.
    ボーダーコリーにとって子供は,毛が少ないか,あるいは服を着た羊にすぎません.庭や玄関を駆け抜ける子供は,囲いを破ろうとした羊に見立てられます.子供が「囲いを破ろうとしている」のを見かけると,ハーディング本能にスイッチが入り,子供の前に立ちふさがり逃亡を阻止しようとします.不意に敵意むき出しに見える犬が行く手をはばみ,睨みつけながら吠え立てるんですから,子供はひどいショックを受けるでしょう.恐さのあまり悲鳴をあげながら,その犬から走って逃げようとします.それが普通の子供のとる行動でしょう.
    この子供(=羊)が指示に従わなかったため,犬は迷った家畜をまとめるため,吠えかかったり踵に歯を当てたりして行動をエスカレートさせざるを得なくなります.すると子供はますます震え上がり,逃げ回り,大声で叫ぶようになります.この悪循環は,犬が最後の手段である「噛つき」(普通は,強烈に頑固で勇敢な羊や牛に対してしか用いられません)を行使するまでエスカレートしてしまいます.このように,子供と犬が持っている2つのごく自然な本能は,実はお互いまったく相容れないものなのです.子供は恐怖から逃れようと自然にふるまっただけであり,犬も徐々に程度をエスカレートさせながら逃げようとする動物を阻止しただけなのです.
  • 現在,ボーダーコリーが持ち込まれる理由としてもっとも多いものは,彼らが「ハイパー」でありコントロールが非常に困難だから,というものです.ほとんどの人が,ボーダーコリーに十分な運動をさせるだけの時間を割こうとはしませんし,そもそも不可能なケースが多いようです.ボーダーコリーが牧羊という仕事のためにブリードされてきたことはすでに説明しましたが,これには並外れた身体的スタミナと耐久性が要求されます.羊を追うということは丸一日をかけた仕事ですし,農場の荒れた土地を何マイルもそれこそエンドレスで駆けたり全力疾走しなければなりません.誰もが羊を飼うという贅沢(あるいは重荷を背負うこと)ができればいいのですが,そうもいきません.このエネルギーのはけ口を別に見つけてやる必要があるのです.

◆ 訓練で子供たちを追わないようにできないのですか?

できません.本能があるとすれば,それはまさしく「本能」なのです.訓練や学習で養われるものではありません.目に見える行動を他の活動に変化させたり修正したりすることは可能ですし(ボーダーコリーがすばらしいフリスビードッグになる所以です),あるいは訓練を通じて他の方向に向けることも可能ですが,本能が無くなるわけではありません.どんなにすぐれた訓練士がどれほど時間をかけて訓練しようとも,ボーダーコリーのハーディング本能を消し去ることはできません.ボーダーコリーも一旦「ハーディングモード」に入ってしまうと,コマンドを聞き逃したり,忘れたり,あるいは無視するような犬になってしまいます.飼い主がどんなに嘆願しても効果がありません.毎年,交通事故で命を失うボーダーコリーが後を絶ちません.一旦本能が目覚めてしまえば,外界のほとんどの刺激に無頓着になってしまうからです.

◆ 子供たちに犬から走って逃げないように教育できませんか?

子供が年長であれば,その場で立ち止まり最悪の状況にならないように教え諭すことができます.犬は家畜が逃げていく恐れがないのを見て取って,リラックスして「ノーマルな」状態に落ち着くことができます.年少の子供でもこの種の状況に冷静に対処するように教えることはできるかもしれません.しかし,5歳以下の子供に(たとえその子が「おませ」だったとしても),歯を当て,うなり,歯を向いて吼える犬にきちんと向き合えと要求するのは酷というものでしょう.決して犬と子供だけにしないということを条件にすれば,両親が家庭犬と幼い子供をきちんと監視することは可能です.ただし,問題は子供というものは仲間と一緒に居たがるということです.近所や家にやってくる子供たち全員にこの犬の本能の対処方法を教えない限り,家族以外のメンバーからは隔離しておく必要があります.ボーダーコリーは近所の人の周りで自由に子供と遊ばせておけるような犬ではありません.誰からも信頼されるような「完璧な」犬でも,子供に噛みつく事件がしばしば起こるのですが,それはそれらの犬が信用されているがゆえに,危険をはらんだ状況により頻繁にさらされているからです.

◆ ボーダーコリーにはどれくらいの運動が必要ですか?

この質問には正確にお答えすることができません.これは「やんちゃな子供にはどれくらいの運動が必要ですか?」とか「サラブレッドには毎日どれだけ走らせればいいでしょう?」といった類の質問と同じです.実際,子供たちを一日中部屋に閉じ込めておいたり,馬を厩につないでおくことも不可能ではありませんが,これでは納得できる回答にはなりません.ボーダーコリーに十分な運動を与えたいなら,毎日2時間はきっちりとした運動や作業をさせる必要があります.あなたが仕事で留守にしている間,ボーダーコリーを一日部屋に閉じ込めておくことも可能ですが,そのかわり,帰宅後にゆっくりしようなどと期待してはいけません.かといって,犬と一緒に何マイルも際限無くジョギングする必要はありません(もしできたとしてですが).ボーダーコリーにとって,心理的な運動(メンタル・エクササイズ)がもっとも疲れる活動なのです(もっとも,このためには犬たちと毎日何かをする必要はあります).沢山のボーダーコリーの飼い主が証言していますが,これらを怠ると,彼らは持て余したエネルギーのはけ口を自分で見つけるようになります.私はこれが作り話でないことをご理解いただこうと,実際の飼い主さん達から聞いた「ホラーストーリー」をいくつか紹介してきました.ボーダーコリーは,「体内に小さな原子炉を持っている」と形容されます.そう,核エネルギーと同様,きちんとコントロールされないと非常に危険なものなのです.

◆ ボーダーコリーがそんなに賢いなら,どうして訓練が容易じゃないんですか?

もしあなたが正式の訓練士でなければ(ほとんどの人は違うでしょう),知恵に溢れたボーダーコリーを訓練するのは大変です.確かに彼らはコマンドをそれこそ2,3回で覚えてしまいますが,同時に,非常に感受性が鋭くいつも考えようとしています.例えばお座りを,右手を上げながら「座れ」と言って教え,犬がそれを覚えたとしましょう.ところが,次の機会に違う角度で腕を上げ少し低いトーンで「座れ」と言ったとすると,ボーダーコリーはそのわずかな違いを感じ取り,あなたが違うコマンドを出そうとしているのだと解釈してしまいます.ボーダーコリーには一般化することを学ぶには難しい時期がありますが,それは正確でないコマンドに従えるために少し「鈍感」になる必要があるからです.ボーダーコリーの訓練は,何でも勘ぐりすぎる利かん坊の子供を教育することに似ています.心身をすり減らし忍耐の要求される仕事です.

◆ 他にも「賢い犬」を飼うための問題はありますか?

犬の知性は「両刃の剣」です.確かに,ボーダーコリーはたくさんの芸を覚え非常に多くのことばを理解しますが,それと同じくらい悪いことも覚えてしまいます.賢い犬を飼うということは,その犬との果てしない知恵比べの戦いに明け暮れることでもあります.彼らのレベルを向上させるため,常に彼らを知的に凌駕する必要があります.例えばボーダーコリーを部屋に閉じ込めるという行為は,無意味な訓練になってしまうかもしれません.扉の中に入れれば,それを乗り越える(あるいはくぐる)ことを覚えます.ドアを閉めればそれを押して開けることを,ノブ付きのドアの場合はそのノブを回すことを覚えます.何人かのオーナーさんが,彼らのボーダーコリーが数字合わせダイアルを開けることができると断言しています(さぞダイアルが回し難いと思いますが).もし,あなたが知恵比べの戦い,特に人間以外を相手にした戦いをエンジョイできないなら,感受性がそれほど鋭くないか,あるいはいわゆる「頭の悪い」犬種を選んだほうが無難でしょう.

◆ 最後に・・・ボーダーコリーを選ぶ前に・・・

不幸なことに,多くの人は犬種と犬を選択するよりも,買い換えの車を選ぶことの方にはるかに多くの時間をかけます.たとえ車の方がずっと値が張るのが事実だとしても,本当は,メーカーやモデルを選ぶことよりも,犬を買う決断の方にはるかに多くのエネルギーを費やすべきなのです.大事な点は,犬が車とは違うということです.すなわち,彼らは感情やユニークな個性を持っていますし,なにより生きて息をしているのです.家に迎えたその瞬間から,犬はあなたの家族の一員になります.惜しみない献身と細心の注意で,彼らを愛し面倒を見る必要があります.犬と車の違いについて,以下の点をいつも頭に置いておいてください.

  1. 犬は長生きします.車も5,6年は大丈夫ですが,ガタがきたり飽きたりしたときに即座に手放すことができます.ボーダーコリーの寿命は15年ほどもありますし,部品交換の機会も少ないので,(犬を迎えるための)決断はより重大なものになります.
  2. 犬を下取りに出して新しいモデルを購入することはできません.犬は年月が経つにつれより親密な家族の一員になりますし,どんな状況が訪れようとも,生涯あなたと共に暮らす必要があります.
  3. 犬には個性があります.車にも色やオプション品などの違いはありますが,基本的にはみんな同じです.ボーダーコリーも1頭1頭が生まれながらにしてユニークな個性を持っています.

私たちはボーダーコリーという犬種全般に関心がありますが,特に彼らの幸せに対して心を砕いています.レスキューに出戻ってくるような「ブーメラン」犬ほど最悪のことはありません.犬が捨てられたり返却されたりすることの最大の原因は,それぞれの違いを考慮せず,お粗末で性急な選択をすることに尽きます.レスキューメンバーが貰われていった先での犬の成長を見守ったり,新しい飼い主が末永く連絡を入れてくれることを期待することはありますが,犬を手放す際に1頭1頭が愛情のある家族に迎えられ,いかなる理由があってもそこから引き離されることがないことを確認することは,レスキューメンバーの使命です.みなし児の養子縁組と同じように,犬たちが一つ家庭の元で末永く暮らせるようにすることが,私たちが何をおいても優先するところです.そう,小犬をペットショップで購入するほうが簡単で手っ取り早いでしょう.ただし,あなたと犬の双方が幸せに暮らせるような処方箋は付いていません.犬を選択するプロセスこそ,長期間で慎重であるべきです.あなたが,あなた自身の選択に絶対の確信が持てなければいけません.家で犬を飼うということは,子供を育てるのと同じで,簡単にやり直しが効くような決断ではないのです.あなたの人生が何年も影響を受けます.くれぐれも,軽々しく考えないようにして下さい.

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